フルータリアンという生き方

フルータリアン (Fruitarian) 果食主義者、果物常食者

最近、知人が「フルータリアン」になりましたとメールを送ってきました。それによると、フルーツしか食べない「フルータリアン」が、すこし前から米国で急増しているらしい。フルータリアンの定義はよくわからないのですが、大まかに「フルータリアンとは、食事の75%以上を果物で、残りを野菜やナッツ類で摂る人々のことを指す」といったところでしょうか。

ヴィーガン (Vegan) との違いは、植物を殺さないで、「植物の自己再生産できる部分のみを人間が頂戴する」ことといえます。植物の命にかかわる部分を取らず、収穫しても植物自体を殺さないかどうかという考えに基づいて食材を選ぶそうです。この点は、厳格なベジタリアンであるビーガンより厳格といえます。
例えば、根菜、葉物野菜、きのこ類などは、収穫してしまったら、その植物の命はそれで終わりになってしまいます。他方、りんご、桃などの果物、ナス、トマトなどの野菜、ナッツ類などの植物の果実の部分は、収穫してもその植物を殺すことにはなりません。そういった収穫しても植物自体を殺すことにならない部分だけを食べるのがフルータリアンです。さらに進んで、熟して落ちた果実だけを食べるというもっと徹底したフルータリアンもいるそうです。

さらに、フルータリアンの中でもさらに2種類あって、まったく火を通さずに食べる人と、調理をする人がいるのだそうです。
(火を通す、つまり加熱調理すると酵素が死滅するので、加熱調理しないという考え方です。ローフードと共通しています、ローフード実践者の中には、ローフードのより厳格な形がフルータリアンだと考えていもいるようです)
加熱調理しないとなると、果物や野菜はそのままか、大きいのはカットするだけ、これだとぺティナイフの一本もあれば十分ですね。コンロやオーブンといわず冷蔵庫すら不必要。(果糖は冷やすと甘味を増す性質をもっていますので冷やして食べるほうがおいしいですけどね)洗わないなら水回りもいらないかも。

つまるところ、フルータリアンとは食事制限の手法ではなく、その人の「生き方」の選択なのかと思います。一種の哲学的な根底があって、よりシンプルなライフスタイル求める欲求や環境・生物への配慮などの結果なのかもしれません。このあたりが、ナチュラル・ハイジーン(自然治癒力を高める目的の、果物と木の実と生野菜中心の食生活)とは異なるところかと思います。
フルータリアン生活を長年続けて健康上問題がないかどうかは、治験データが少ないためまだ疑問視する声もあります。健康維持の観点から、フルーツだけの朝食をとり入れるなど、少しずつフルータリアンに近づいてみるのがいいかもしれません。ヴィーガンからフルータリアンへは、ローヴィーガンの期間を経て、ゆっくり時間をかけて移行するのが、体もなじみやすいと言われています。

栄養学的な問題について(フルーツは完全食か)

ビタミンやミネラル、抗酸化成分などの栄養が摂れるフルーツは体にいい面があることは間違いないけれど、ほぼフルーツの生活で、本当に健康な生活が送れるのか?というと、賛否両論のところではあります。「フルーツには、たんぱく質も入っていますし、脂質も採れるので、栄養的にはなんら問題がない」という人もいれば、「果物だけでは充分な栄養は摂れない、たとえば筋肉を維持する分枝鎖アミノ酸やグルタミンは摂ることができな」、と指摘する栄養学者も多い。もっとも、生のフルーツが健康にいい、というのは異論をとなえる余地のないところではあるのですが。

アップル社の創始者スティーブ・ジョブズが行っていた「フルータリアン・ダイエット」では、、ジョブズの伝記映画『jOBS』で、主役を演じるアシュトン・カッチャー氏が、役作りのためにジョブズが行っていた「フルータリアン・ダイエット」を真面目に行った結果、体調が悪化し病院に搬送されるという事件もありました。
Jobs氏はしばしば、フルーツを多く取り込む食生活が創造性を刺激し、彼自身の成功の礎になったと主張し、大学時代から絶対菜食主義を貫き、リンゴやニンジンなどフルーツや非加熱の野菜以外、口にしなかったとされています。
『jOBS』の主役を演じるアシュトン・カッチャー氏は撮影前に、強烈な痛みを覚え、病院に搬送され、彼の膵臓を調べたところ、完全に異常をきたしていたといいます。これと直接の関連性があるかどうか定かではありませんが、Jobs氏の死亡原因は、膵臓ガンだったことが知られています。

完全な菜食におけるリスクについては、2005年に発表されたイギリス栄養財団による報告書の要約において、「よく計画された、バランスのとれたベジタリアンもしくはヴィーガンの食事は栄養的に十分となりうるが、厳格なマクロビオティックや生食のような、より極端な食事では、しばしばエネルギーや各種の微量栄養素が不足し、子供には全く不十分で不適切である」と述べられている。

果糖とAGEs、老化について

果糖の代謝時にできる中間体である「グリセロアルデヒド」から作られるAGEsは、他のAGEsよりも毒性の強いAGEsと考えられています。これが、老化の加速に及ぼす影響が問題なのではないかと危惧する意見があり、一方で生の果物には抗酸化作用のある物質がたっぷり含まれているのでAGEsについてはまったく問題がない、事実「フルータリアンは若く見える」と全く逆の意見をいう人もいます。果物には「フィトケミカル」といって、抗酸化力が高く、アンチエイジングの強い味方になる成分が豊富だからです(フィトケミカルとは、野菜や果物に含まれている色・香り・苦みなどの成分)。この件については、はっきりしたエビデンスがないのでよくわかりません。

また、果物に含まれる果糖は体に入ったあと小腸に運ばれ、さらに肝臓で代謝されてブドウ糖や脂肪になります、果物を食べ過ぎるとその脂肪が体にたまり、肥満の元になる可能性があるほか、肝臓にも負担がかかります。脂肪細胞が太るとアディポネクチン(アディポネクチンは脂肪細胞が分泌する物質)の分泌が激減します。このアディポネクチンは老化と密接な関係にあり寿命も左右する物質だということが判明しています。マウスの実験では、高果糖のエサを食べたマウスは肝臓での脂肪酸合成や脂質異常症、肥満などが促進されるという結果が複数報告されています。果糖をとりすぎると、肝臓での脂肪酸の合成や内臓脂肪を増やし、メタボリックシンドロームを促進する可能性があるというわけです。フルーツに多く含まれる糖分の果糖は、GI値(食後の血糖値の上昇を示す指数)が低く、ブドウ糖に比べて血糖を上げないからよいといわれてきましたが食べ過ぎはよくないということでしょう。

果糖に関しては、寝る前に食べると果糖が体にためこまれてしまい、太りやすくなるから「1日の前半に摂った方がいい」といいともいわれています。

ナチュラルハイジーン的なフルーツの効果的な食べ方

1.フルーツは朝一番の空腹時
フルーツは朝起きて、空腹時に一番に食べるのが理想的だと言われています。
2.フルーツは単体で食べる
フルーツはそれぞれ持っている消化酵素が違うので、一度に2種類以上のものを混ぜず
リンゴならリンゴ、オレンジならオレンジを、そのまま食べるのが理想的だそうです。
3.フルーツは常温
フルーツは冷やした方がおいしいですが、酵素は常温時が最も活発なため、そのまま常
温で食べるのが健康効果が高いとされています。
4.お腹が空いた時だけ食べる
フルーツは、強い空腹感を感じたときだけ食べるのがよいそうです。量は満足するまで
好きなだけ食べてよいそうです。

2型糖尿病とフルーツの関係:ブルーベリー・ブドウ・リンゴでリスク低下(追加情報)

新鮮な生のフルーツを食べるほど2型糖尿病のリスクが下がるが、しかしフルーツジュースでは逆効果でたくさん飲むほどリスクが高まるとする研究結果が、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ 2013年8月30日オンライン版)で発表されました。

米ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health、HSPH)など英米シンガポールの共同研究チームは、約25年間にわたって米国で行われた3つの大きな健康調査のデータを精査した。調査対象は看護師や介護士などの医療従事者18万7000人以上で、数年にわたって健康状態を観察され、食習慣や体重、喫煙、運動、その他生活スタイルの指針となる事柄について定期的にアンケートに答えていた。このうち約6.5%の人が糖尿病にかかった。

このデータによると、フルーツを丸ごと食べるのは月1回未満という人と比べ、毎週2回食べている人では2型糖尿病のリスクが最大23%低かった。特にブルーベリー、ブドウ、リンゴで効果がみられた(イチゴとマスクメロンは関連性が低かった)。一方、フルーツジュースを毎日1杯以上飲む人では、糖尿病リスクが最大21%高かった。論文はこの「有意差」についてさらなる研究が必要としています。

フルーツと糖尿病リスク
出典:BMJ(http://www.bmj.com/content/347/bmj.f5001) Pooled multivariate adjusted hazard ratios and 95% confidence intervals (error bars) of type 2 diabetes for substituting three servings/week of total or specific fruit for the same amount of fruit juice

生のフルーツとフルーツジュースでは栄養価は同程度だが、この差を生んでいるのは半固体か液体かの違いにあると推測し「液体の方が固体よりも胃を通過して腸に到達するのが速い、言い換えれば、そのままの果物よりもフルーツジュースの方が血糖値と血中インスリンにより速く、より大きな変化をもたらす」と述べています。
各フルーツのグリセミック指数/血糖負荷の値の差が、そのまま2型糖尿病のリスク低下値と関連していないという件について、上記の液体か固体かの他にも、その他の色々な含有成分が影響していると考えられます。

また、砂糖(ショ糖)の過剰摂取(80g:おおよそオレンジ3.3個分)は白血球の働きを1~5時間半減するという研究結果があるそうです、さらに、タンパク質・必須脂肪酸不足により免疫能が低下することも知られており、植物繊維等を除いたフルーツジュースにして大量に摂取を続ける食生活は危険といえます。

■ブルーベリー、りんご、および赤や黒ブドウは、アントシアニンを含んでいます。
アントシアニンの摂取量のレベルは反比例して、2型糖尿病のリスクと関連していたことが明らかになりました。
アントシアニンは、目の機能を向上させ、血圧上昇を抑制する働きをもつほか、活性酸素の抑制、肝機能改善、毛細血管保護、血小板凝固の抑制、動脈硬化などの生活習慣病予防などの効果があるとされています。また、エラグ酸も生活習慣病予防に役立つほか、美白成分としても知られる。

■赤・白両方のブドウは、果皮にレスベラトロールを含んでいます。
レスベラトロールの、他の人での試験結果では、エネルギー消費・代謝率・血糖値・血圧が低下し、肝臓に蓄積した脂肪も減少している。また、レスベラトロールがサーチュインタンパク質(長寿遺伝子)を活性化するともいわれている。つまり、長寿遺伝子サーチュインのスイッチをオンにしてくれる、アンチエイジングには欠かせない成分です。

■プラム、アプリコット、そしてリンゴはクロロゲン酸を含んでいます。
クロロゲン酸は腸のグルコース吸収を遅くすることによりグルコース依存性のインスリン分泌ペプチドの分泌を減らすことができます。また、クロロゲン酸が筋肉のグルコース取り込みを増加させます。

■グレープフルーツは、ナリンギンを含んでいます。
ナリンギンは、抗酸化作用や食欲を抑える作用、脂肪の分解を促進する作用などがあり、高脂血症にも効果があるといわれています。
しかし、治療薬の一部に作用して、薬効を強めてしまったりすることがあるので、病気治療のためなんらかの薬を服用中の方はサプリメントとして摂取するのは注意が必要です。

■レモンの皮や果汁に含まれるエリオシトリンは、強力な抗酸化力を持ち、生活習慣病の予防効果が期待されている。運動によって生じた酸化ストレスを抑えるはたらきもあります。実や皮に含まれる苦味成分リモノイドには発がん物質を解毒する機能を高める作用ががあると注目されています。また、柑橘類の皮に含まれる精油成分リモネン遺伝子レベルで発がんを抑える作用が知られています。

■温州みかんには、βークリプトキサンチン=黄色い色素が多く含まれていて、これは発がん促進段階の抑制効果が高いといわれています、また、尿病や動脈硬化、骨粗しょう症などのリスクを防ぐ作用についての研究が現在行われています。皮に多いヘスペリジンには血流改善作用があることが知られています。

■メロンは、一酸化窒素(NO)を発生させて血管を拡張、高血圧などの予防に役立つシトルリンを多く含んでいます。メロンをとったら疲労感が減ったという研究もあるそうです。

など、今回の過去の研究結果を統合した発表ですが、フルーツと2型糖尿病のリスクとの間の有意な関連や健康に及ぼす影響については、研究により結果が違っていたり効果がないと判定されたりすることもあり、今後の研究に期待されます。

フルーツと創造性について

フルーツにはチロシンという、アドレナリンやメラニンを形成するアミノ酸が多く含まれています。チロシンを多く含んだ食べ物は、創造性を促進すると同時に、より鋭い思考力を育むことに役立つという研究結果がでています。Jobs氏の「フルーツが創造性を刺激し、成功の礎になった」と主張は正しいのかもしれません。
また、チロシンは、神経細胞の興奮や抑制を伝達する神経伝達物質の原料となり、神経や脳の働きをサポートするために必要なアミノ酸で、うつ病の改善、認知症の予防に効果的だといわれています。
食事からチロシン摂取する場合は、バナナやアボカドなどの果物のなかに苦みを感じる成分として多く含まれているそうです。また、チロシンは糖分と一緒に摂取すると吸収が良くなる性質があり、フルーツから摂取することで効率良く摂取することができます。(りんごは切ってしばらくすると変色してしまいます。これはりんごに含まれるチロシンが空気に触れ、チロシナーゼという酵素が働くことで酸化し、メラニン色素を生成するためです)
チロシンだけでなく、フルーツを食べる場合は、皮や種まで丸ごと食べるのを心がけるがいいのでしょうね。

また、オーストラリア、クイーンズランド大学の【野菜と果物摂取と、個人の幸福度(生活に対する満足度、ストレス度、活力度等)との関係による研究】により、野菜や果物は人の幸福度も上げてくれることがわかっています。その研究結果では、最も幸福度が高いのは野菜4対果物5を摂取している人が主観的幸福度が最も高くなるようです。肉を多く食べる人は攻撃的な性格になるという事と合わせて、食生活が日常行動に影響することは確かなようです。

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