糖尿病と認知症の関連について(追加情報)

糖尿病は目(糖尿病性網膜症)、腎臓(糖尿病性腎症)、手足の神経(糖尿病性神経障害)の三大合併症をはじめ、脳卒中や心筋梗塞などになりやすいことが分かっている。これに加えて注目されているのが、認知症との関係です。

国立長寿医療研究センター 物忘れセンタ 櫻井先生
糖尿病ではインスリン量や働きに異常が起こり、アルツハイマー病の確立が上がる。
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「65歳以上高齢化だけが問題ではない。
認知症は病気が広く知られるようになり、診断技術も向上した。増加にはある別の病気が関係している。
それは糖尿病で、2型糖尿病患者がアルツハイマー病になる危険性は2倍だ」
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糖尿病と認知症との関係では、すでに脳血管性認知症との関連については疫学調査からほぼ100%相関があることがわかっており、糖尿病の人はない人と比べ3~4倍認知症になっている。また、糖尿病とアルツハイマー病との関連性については疫学データからみると約2倍になっているらしい。アルツハイマー病を「3型糖尿病」ということもあるという。

糖尿病になると、高インスリン血症(細胞に取り込まれなかった糖が、再度血液中に戻ってインスリンが分泌され、血液中のインスリンが常に高い状態)や脳内インスリン抵抗性が高まるが、これによってアルツハイマー病の原因であるアミロイドβ蛋白の分解を抑えられる、あるいは産生が進められると考えられる。この状態がADの発症を促進するという。

糖尿病とアルツハイマー病の両方を予防するために

●1日1時間程度のウォーキング
運動は糖尿病の予防だけでなくアルツハイマー病の予防にも最適。
運動をすると、神経細胞を壊すアミロイドβを分解する酵素を増やすことが動物実験で判明。
1回に1時間かけるのではなく、何回かに分けても効果はあります。

●地中海料理
オリーブオイルなどがよい。
発症した人/してない人の食生活を比較をすると食べ物の特徴があったそうです。
地中海料理は、以下の項目が多いです。

1.魚介類がおおい
2.オリーブ油を多く使う
3.ワインを飲む 1~2杯
4.緑黄色野菜が多い

また、地中海式ダイエットの実行で、空腹時血糖が低くなると同時に、脳卒中のリスクが減ることが報告されています。このダイエットを生活に取り入れると、遺伝的に糖尿病にかかるリスクが高い人たちの間でも、脳卒中のリスクを引き下げることができると分かりました。

ワインの効能については、2005年のある研究で、適量のお酒を毎日飲むと、糖尿病のリスクは最大30%下がることが分かっています。アルコールには、血中のブドウ糖をエネルギーに変えるホルモン「インスリン」の分泌を促す作用があるようです。また、ある大学の研究で、アルコールを飲む習慣のある人はそうでない人よりもアルツハイマーや認知関連の障害にかかる確率が23%低かったそうです。これは、善玉コレステロールの影響で、脳の血流が良くなるためではないかと考えられています。

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一方で・・・

国立長寿医療研究センターの鳥羽研二病院長によると、「昔から認知機能向上に役立つとされる青魚のDHAは、欠乏している人には有効ですが、過剰に摂取しても効果がないことが最近の研究で明らかになりました。抗酸化作用が高いとされたビタミンEやビタミンB群の補充についても同じく、最近、専門家から否定的な見解が出ています」とのこと。
生活習慣病は、日々の食生活、適度な運動で改善でき、進行が進んでいなければ、食事療法と運動療法で治るといわれています。バランスのよい食事を心がけることが、認知症対策につながるようです。また、食事療法として糖質制限を行う場合、極端な糖質制限は症状や体質など、場合により悪化することがあります。

糖質制限は糖質が減った分、代わりに内臓脂肪をエネルギーとして消費するので、体脂肪が減り体重も減ります。
ですが、治療中の病気のある方は注意が必要です。特に腎臓が悪い方は行わないでください。糖質制限では糖質を減らす分、タンパク質と脂肪を取る割合が多くなります。腎臓病の治療食は低タンパク食であることを考えても、高タンパク食で腎機能障害が悪化します。
高脂血症の方も悪玉コレステロール(LDL)が上昇する場合があります。狭心症などの動脈硬化の原因は酸化LDLですが、LDLが多くなると、酸化LDLも増加します。糖尿病で内服薬やインスリンで治療中の方は糖質制限で低血糖になる恐れがあります。必ず主治医の先生と相談してください。

追加情報Ⅰ

HealthDay News 7月29日
http://consumer.healthday.com/senior-citizen-information-31/misc-aging-news-10/diabetes-not-linked-to-alzheimer-s-disease-progression-678721.html
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HealthDay News

HealthDay News

「JAMA Neurology」オンライン版に7月29日掲載されたRichard O’Brien氏らの論文で、「高齢者の認知障害は通常、ADや動脈硬化といった因子が原因になっているが、高齢糖尿病患者における認知障害の発症機序はADの病理を介したものではないことがわかった」と解説。
ただし、動脈硬化は高齢者における認知障害の重要な寄与因子であることを挙げ、
「糖尿病は動脈硬化のリスク因子であり、糖尿病患者は引き続き血糖管理をうまく行う必要がある」と強調している。

また、HealthDay News 2013.8.12掲載の研究論文情報では「血圧変動が精神機能低下に関連する可能性」に言及している。(以下引用)

心血管リスクの高い高齢者では、血圧の大幅な変動は記憶障害や思考困難に関連する可能性があることが、オランダ、高齢者エビデンス・ベースド・メディスン研究所(IEMO)所長のSimon Mooijaart氏らの研究で示唆された。研究論文は、BMJオンライン版に7月30日掲載された。

平均血圧に関わらず、血圧の変動が大きいと精神障害につながる可能性があるという。Mooijaart氏は、今回の研究は関連性を示すのみで因果関係は示していないため、最終的な結論を出すには時期尚早であると警告しつつも、「因果関係があれば、血圧治療薬を用いて変動を抑えることが、認知症リスク低減に有用な可能性がある」と述べている。

追加情報Ⅱ

高い血糖値は糖尿病ではない人でも認知症の危険因子であることを示唆
NCBI(米国バイオテクノロジー情報センター):www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23924004

米ワシントン大学医学部のPaul K. Crane氏らが、「より高いグルコースレベルは糖尿病でない人認知症のリスクを増大させるか」について研究結果を発表し(The New England journal of medicine:2013年8月8日)、その結果によると、血糖値が高い高齢者は7年以内に認知症になるリスクが最大で18%増えたという。
結論として「我々の結果は、より高い血糖値は糖尿病でない人の場合でも、認知症の危険因子であることが示唆された」としている。

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